平成21年11月9日月曜日

流れ、自由、闇、ねじれ

週末から今日まで、Jordan Bloom先生のアヌサラヨガのトレーニングの通訳を3日間していました。アヌサラヨガは、タントラ哲学を背景とし、アラインメントの原則において特徴的なヨガです。哲学と実践を組み合わせた内容で、講義で学んだコンセプトをアサナの練習を通じて体で表現していきました。

Anusaraという言葉は、大いなる流れに身を委ねる、などと訳されるサンスクリット語です。英語では、Open to Graceなどと訳され、それがアヌサラヨガの究極のテーマになります。そこで大いなる流れに身を任せるということについて話していきました。

ヨガは、いつでも平和でハッピーになるためのものではない。人生では良いことも悪いこともいろいろ起こる。サーファーは、どんな波が来ても上手に乗っていくように、人生どんな波が来ても、受け入れてそれに乗る。抵抗すれば波にのまれて完全にコントロールを失う。どんな波が来るかはほぼコントロールできないけれど、どんな波でも強さと柔軟性を持って上手に乗ることは出来る。ヨガの練習を通じて、人生の偉大な流れに逆らうことなく、ありのままを受け入れて、ともに流れていく術を身につけていくことが大切。

自由に関して。自由と制限のバランス。完全な自由はある種の混沌を招く。適度な構造を与えながら、さらなる自由を体験する。私たちは常に自分で選択する自由がある。自分でした選択、結果にも責任を持つ。どんな状況に対しても一切の被害者意識は捨てること。自分で責任もって選択をし、一切後悔はしない。自分の意識世界を支配する王様、女王様になること。


土曜夜は大野先生の舞踏研究所お稽古へ。

空間を感じる。そこにある何かを感じる。
以前一雄先生がある横浜の入れ墨師に感銘を受け、研究所に招待したらしい。そうしたら全身入れ墨の人を6、7人連れてきてくれて、研究所で脱いでみせてくれたとか。それを機に一雄先生の踊りはまた変貌を遂げたとのこと。
どの空間にも歴史が刻まれている。この研究所に刻まれた入れ墨に、目を見張るように踊りました。

光と闇。根っこは地の闇の中、花は天の光へと伸びる。体の芯を通し、花になり、光と闇両方と繋がりました。

大野一雄とともに舞踏を作った土方巽の生前の話。土方巽の踊りは、暗黒舞踊と呼ばれ、まさに暗黒なものでした。義人先生によると、彼のお兄さんは兵隊に行き、お姉さんは芸者に売られ、極寒の秋田で非常に貧しい環境に育ったそうです。彼ととても親しかった義人先生によると、その暗さは半端じゃなかったそうで、飲み屋にいても土方さんのまわりだけなんだか暗かった、帰る時の背中もとても暗かった、とのこと。先生のまじめな言い方に笑いが起こる。でもやはり、さすが、革命的な暗い踊りを作るだけの人です。

花を落とす。そのときも、舞踏。どう落とすかが大切。日常も含め、全てを舞踏にする。

空間をねじ曲げる。ゆっくりと回りながら、ぎゅいーーっと中心軸からねじられていく空間。これは比較的長い時間やりましたが、中心軸から一切ずれずに動くことは、かなりの集中力を必要とし、よい練習でした。

演劇評論家の郡氏正勝さんの言葉。「なにかやろうとするからつまらない。」何かやってみせることが仕事の表現者にとっては厳しい言葉ですが、無駄に動き回って自分の表現を押し付けずに、想像の余地を与えることの必要性、確かに理解します。頭で考えて作られたものよりも、思考の止まった無の状態から生まれてきたものの方が力を持つということはよくあることです。

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