平成21年9月24日木曜日

『音の神秘』〜生命は音楽を奏でる〜


インドの偉大なヴィーナー奏者、歌手で、西洋にスーフィーを広めた、ハズラート・イナーヤト・ハーンによって書かれた『音の神秘』を読みました。インドで出会った友人に勧められ、目次を見ただけでもすごそうな内容で、日本に戻ったらぜひ読んでみたいと思っていた本です。
現代において、芸、娯楽、気晴らしのもとと捉えられることの多い音楽ですが、この本は音楽の神聖さ、癒しと進化をもたらす力を教えてくれます。印象に残った部分の一部を紹介します。


*[音楽芸術が神聖だと考えられる理由は、音楽が] 宇宙のすみずみまで作用している法則の精密な縮図だからです。たとえば私たち自身を観察してみると、脈拍、心臓の鼓動、鼓動、呼吸のいずれもがリズムの働きであることがわかるでしょう。生命は肉体の全メカニズムの作用に依存しています。気息は、声、言葉、音として現れ、音は自分の内と外に絶えず聞こえています。p.16

*音楽は優れた音楽家の魂に限らず、どんな赤ん坊の魂でも鼓舞します。この世に生まれて間もない赤ん坊でさえ、音楽のリズムに小さな手足を動かそうとします。それゆえ、音楽は美の言語だと言っても過言ではありません。生きとし生ける魂が愛してきた一なるものの言語だと…。p.16

*内なる礼拝の道をたどる者には、音楽が霊的発展のために絶対必要になってきます。そのわけは、霊的発展を求める魂は姿なき神を求めているからです。美と力と魅力を持ちながら、形を超えて魂を向上させることが出来るのは音楽だけです。p.17

*精神とは最も微細な物質であり、物質とは最も粗大な精神です。最も繊細な芸術である音楽は、魂を助け、さまざまな違いを克服させてくれます。それはことばを必要としないため、魂どうしを結びつけます。音楽はことばを超越するのです。p.52

*インド音楽の目的は、心と魂を鍛えることです。というのは、音楽は心を集中させる最良の方法なのです。実のところ、ある対象に集中しなさいと言っても、相手の心は集中しようとして動揺してしまいます。ところが、魂をひきつける音楽は心の集中を守り続けます。どうそれを鑑賞するのかを知って心を音楽にあずけさえすれば、人は一切のものから離れ、おのずと集中力を発達させるようになります。p.55

*音楽には美しさに加えて、心を生き生きとさせる優しさがあります。細やかな感情や思いやりのある人にとって、この世の生は耐え難いものです。それは人をいらだたせ、時にはぞっとさせます。いわば心を凍らせてしまうのです。天国であるはずの現実生活が、苦悩の場と化してしまう訳です。音楽に心を集中できれば、それは凍えていたものを温めるようなものです。心は本来の状態を取り戻し、リズムは心臓の鼓動を規則正しくし、それが体、心、魂の健康を回復させ、正しく調律します。生の喜びは心身の完璧な調律にかかっているのです。p.55

*健康とはリズムと音調が完全な状態であることを知ります。音楽とはリズムと音調です。健康が乱れた時には、音楽が乱れているということです。p.110

*私たちの日々の体験に、生命の音楽のメロディーやハーモニーが表れます。語られた言葉はみな、私たちの理想像の音階に照らして、正しい音か間違った音のどちらかになります。ある人の声の調子は警笛のように耳障りで、別の人の声の調子はフルートのように心地よいのです。p.193

*人間どうしの敵味方、好き嫌いは協和音と不協和音のようなものです。人間性の調和や、心ひかれたり拒絶したりする人間の性向は、音楽における協和する音程と、不協和な音程の効果のようなものです。p.194

*声の研究でとりわけ素晴らしいのは、声からその人独自の進化や、その段階がわかることです。相手を見なくてもまさにその人の声が進化の度合いを教えてくれるでしょう。人の性質は間違いなくその人の声で分かります。人生における他のあらゆることと同じように、霊的に発展していくたびに声も変化していきます。人生のあらゆる体験はイニシエーションです。それが世俗的な生活であっても人は前進し、この体験が人の声を変えるのです。p.76

*歌手になる必要はありませんが、一人一人が1日のうちに5分でも15分でもいいですから、できるかぎり声の開発のために時間を割くことが必要です。p.73

*霊的な道の途にある思想家、探求者、そして瞑想する魂にとっては、時折自分の声を調べて魂の状態を知るのが最も重要なことでした。声は気圧計です。暖かかったり寒かったり、春だったり冬だったりと、朝から晩まで自分自身の作りだす天気を、それで観察できます。人の声は、やってくるものを私たちに告げる道具、気圧計です。なぜなら、やってくるものというのは、作り出されたものに対する反応であり、結果だからです。この問題をもっと深く考えようとする人たちは、自分自身の声を調べるだけで、それらが一歩一歩どのように霊的な道を進んでいるのかが分かってくるでしょう。p.80

*自分の持っているような声は他にはないということを、誰もが自覚しなくてはなりません。誰もが宇宙のオーケストラの楽器であり、全ての声はその楽器のひとつから生まれる音楽なのです。p.80

*霊性を獲得するとは、全宇宙が一つの交響曲だとはっきり理解することです。その中で個々人がひとつの音となり、その人の幸せは宇宙のハーモニーと完全に同調することにあるのです。p.120

1 件のコメント:

brownie さんのコメント...

私もそう思います。素敵な本ですね。
是非、読んで見たいです。